3.ねっつぃと自転車

 ある日、ねっつぃ君の家に、お友達のハミルトン君がやってきました。
チリーン、チリーン、ガラガラ。ハミルトン君は自転車に乗っていました。その自転車には補助輪がついていました。ねっつぃ君はうらやましそうに言いました。
「ハミルトン君、それどうしたの?」
ハミルトンは自慢気に答えました。
「お父さんに買ってもらったんだ、いいだろ。」
「いいなー。僕も欲しい、僕にも乗せてよー。」
「ちょっとだけだぞ。」
ねっつぃ君は自転車に乗ってみました。
ゴロゴロ、ゴロゴロ。ねっつぃ君がペダルをこぐと自転車は進みます。
「もう、終わり。」
ねっつぃ君が少し前へ進んだところで、ハミルトン君は言いました。
「もっと乗せてよ。」
とねっつぃ君は自転車から降りて、言いました。
「やだよー。これは僕んだ。」
といって、ハミルトン君は自転車に乗って行ってしまいました。ねっつぃ君はアリさんの言う世の中だと思いました。

 その夜、お父さんにそのことを話しました。
「そうか、ハミルトン君は自転車を持っているのか。」
お父さんは言いました。
「ねえ、僕にも自転車を買ってよ。」
「わかった。何とかしよう。」

 何日か経って、お父さんが自転車を持ってきました。それは、ちょっと汚れた自転車でした。
「知り合いの家にあったのをもらったんだ。」
お父さんはそう言いました。
 ねっつぃ君は、新品でないのはがっかりしましたが、自転車がもらえたので喜びました。
「試しに乗ってみろ。」
とお父さんは言いました。
 ねっつぃ君はその自転車に乗ってみました。
ガシャン、ねっつぃ君は自転車ごと倒れました。その自転車には、補助輪がついていなかったのです。
「えーん、痛いよー。」
ねっつぃ君は泣きました。

 次の日、ねっつぃ君はお父さんに
「お父さん、補助輪買ってよー。」
と頼みました。
「補助輪なんていらないよ。自転車に乗れる人は、補助輪なんかいらないんだよ。ハミルトン君を見返すなら、補助輪なしで乗れるようにならないといけないよ。」
とお父さんは言いました。
「じゃあ、どうしたら乗れるの?」
とねっつぃ君は聞きました。
「努力だ、努力すればなんでもできるんだ。よし、今日から特訓しよう。」
その日から、ねっつぃ君とお父さんの特訓が始まりました。


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