2.ねっつぃと車酔い

 おじいちゃんの家で楽しく過ごしたねっつぃ君のところへ、お父さんが迎えに来ました。
ねっつぃ君はもう、お家に帰らなくてはいけません。
「おじいちゃん、おばあちゃん、またね、ばいばい。」
とねっつぃ君は言いました。
「また来るんだよ、ただ茶を作って待っているから。」
おばあちゃんはそう言って、ねっつぃ君を見送りました。
 おじいちゃんの家は、山奥にあります。そこからねっつぃ君の家に帰るためには、バスと電車に乗らなくてはいけません。ねっつぃ君はお父さんと一緒に、バスに乗りました。バスは駅に着くまでに1時間かかるので、ねっつぃ君は足を投げ出し、ポケットゲーム機で遊びました。山道を進むバスは、ゴトゴト揺れます。ねっつぃ君はなんだか気持ち悪くなりました。
「お父さん、気持ち悪いよ〜。」
「ねっつぃ、それは車酔いだ。車の中で、ゲームをしていたからなったんだ。ちゃんと座って、前を見ていろ。」
ねっつぃ君はそうしました。すると、気持ち悪いのが少し直りました。バスを降りた後、お父さんは言いました。
「車酔いは、ゲームだけでなく、本を読んでもなるんだぞ。」
ねっつぃ君はこれから車の中では、ボーっとしてようと思いました。

 その後電車に乗って、ねっつぃ君の家に着きました。
「ねっつぃ、お帰り。」
お母さんは嬉しそうに言いました。
「お母さん、ただいま。ただ茶ちょうだい。」
「なあに、ただ茶って。」
「ただのお茶だよ。」
「ただのお茶ね。」
お母さんは勘違いして、ただのお茶を煎茶だと思って、ねっつぃ君に出しました。
「おばあちゃんのただ茶もおいしいけど、お母さんのただ茶もおいしい。」
もちろん、お母さんのお茶はただなので、二人とも勘違いに気づきませんでした。ねっつぃ君がお茶を飲んでいる時、一匹の虫がねっつぃ君の周りを飛んでいました。
「あら、虫だわ。いやね。」
お母さんは、はえ叩きを持ってきて、虫を叩こうとしました。
「だめだよ、お母さん。一寸の虫にも魂なんだから。」
ちょっと間違えていますが、ねっつぃ君はおじいちゃんの言葉を覚えていました。
「そうね。」
お母さんはそう言って、窓を開けて、虫を外へ追い出しました。
ねっつぃ君は、大好きな漫画のまねをして、こう言いました。
「これでいいのだ。」


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