unconscious delusions
彼は私を諭すようにこう言った。
「迷いが全くないほど楽なことはないが、その分、時間はあっと言う間に過ぎていく。ひょっとしたら振り返っても何も思い出せない空白の時間を過ごすはめになるのかもしれないな。」
私はこう反論した。
「一生懸命頑張れば、充実した時間を過ごせるはずだよ。」
「それは、向上心があって、目標を追っている場合だ。何も考えずに、目の前の仕事に一生懸命取り組むだけで、何が残るんだ。それは、本当は迷わなければいけないのに迷うことから逃げているだけだ。」
「いや、迷いなんてないですよ。」
「そうか…。散々考えた後の決意があって迷いがないのならいいが、初めから迷いがないのは見えていないのだよ。一つのことしか知らないからそれしか見えない。他のものを知らないから比べることもできない。もっと広い視野で外を見ないと何もわからないまま終わるよ。」
足が止まったように思えた。ただ走ることしか知らなかった。周りの景色は速く流れていて、よく観察することはできなかった。いつも一本道のように見えたので、私はゆっくり選ぶことも知らなかった。胸騒ぎでその日はなかなか寝付けなかった。
第27話
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