a frozen sense

 私の心の中の片隅に凍えているものがいた。それは密かに抱いていた夢であった。寒さに耐えながら、決してそこから出て行こうとはしなかった。それまで、私は彼らの存在を意識することも忘れて、見殺しにしてしまっていたのかもしれない。
 しかし、凍える彼らに温もりを与えようとしても、動かし難い現実がそこにあるように思えた。ただ、自分の力以外の何かがこの状況を変えてくれはしないかと期待しながら、木枯らしの中をひとり進むしかなかった。
 その間にも、世界や世の中の状況は刻々と大きく変化していった。テレビをぼんやりと眺めていると、ある国の勉学熱心な大学生がインタビューに答えていた。「なぜ、そんなに頑張って勉強するのですか?」という問いに彼女は答えた。「生きるためです。」と。濁流のように流れる現実を受け止められるようになったのはそのときだった。

第13話
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