neglected happiness

「だから、幸せになるために成功したいんです。」
「なるほど、君は収入が多くて世間的に高い地位にある身分を得ることで幸せになりたいんだね。でもね、お金はあるにこしたことはないが、そのお金で何をするんだい。贅沢な暮らしをすることが幸せだと思っているのかい?」
「たぶん、自分の稼ぎが多いほど自分が優れているんだって思えると言うか…。」
「君は収入を自分の能力に対する評価と捉えているんだね。で、どこで何をして能力を発揮したいんだい?」
「何でも良いんです。どこでも。」
「何でも良い…。そうか、君にはしたいことと言うものがないのか。目的のない成功は真の成功では有り得ないよ。自分が認められるために善か悪かも判断せずに能力を用いるのかい?」
「いや、そういうわけでは…。」
「そう、幸せは自分が納得できる状態でしか訪れないよ。」
「納得ですか。」
「今ある状態に納得できれば幸せを感じることができる。しかし、いくつもの不満をもっていれば幸せでなくなってしまう。欲望が強すぎて満足を知らなかったとしたら、幸せは訪れないのかもしれないな。」
「人によって幸せの感じ方は違うのですね。」
「当たり前で見落としがちなことだが、ここに平和に生きていられるだけでも幸せなことだ。生きる権利は誰にも阻害されないはずなのに…。なぜ…。」
「皆が幸せになれないものですかね。」

第12話
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