straight maze
昼食をとった帰り道、慎一は康祐に語りだした。
「君は色々頑張っているようだが、僕には迷走しているように思えるよ。」
「なんでだよ。ただ、自分の将来のために役に立つだろうから、ただ真っ直ぐに必死に頑張っているだけじゃないか。」
「必死に目の前のものに取り組むのは結構なことだが、それ自体が目的になってしまっているんじゃないかな。それで、将来のビジョンがかすんでしまっていないか。」
「将来のビジョン…。」
「目的を達成するために必要なことをしっかりと見定めないといけない。ずれたところを必死で追っていても、辿り着いたと思ったら、目的地とは違うところだったなんてことになるよ。」
「ずれているのかな…。」
「よく整理してみるといいよ。もっと全体を眺めて、今していることがどこに位置するのか、何を補うべきかを見つけるんだよ。」
「うん、無暗に走っていたのかもしれないな。自分がどんな道を歩いていたか、今どこにいるのかさえ忘れていたよ。周りの景色すら目に入らなかった。もう、こんな季節になっていたんだな。」
二人の歩く並木道は真っ赤に色づいていた。
第11話
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