情報社会と環境問題


1. はじめに

 近年、情報技術の発達により、社会・経済の情報化が進んでいる。電子メールやホームページによる情報のやり取りをはじめとして電子商取引(EC)やオンライントレードもできるようになった。さらに、行政サービスさえもオンライン化されようとしている。このように社会の情報化が進むことでもたらされる地球環境への影響を考察し、提言する。

2. 情報の信頼性

 インターネット上には様々な情報が溢れている。インターネットに接続できる環境さえあれば、その膨大な情報から欲しい情報を探し出すことができる。もちろん、環境情報もあり、新聞やテレビのニュースでは取り上げられないような専門的な情報から、海外のニュース、豆知識まで手に入れることができる。こうした様々な情報が手に入るのは、公的機関や企業のみならず、NGO・NPOや個人も情報を発信しているからである。
我々は世界中の様々な環境関連情報を手に入れ、学習したり、知識を生活に生かしたりすることができるが、それらの情報を鵜呑みにするのには問題がある。誰でも情報発信できるということは、虚偽の情報が出回る可能性があることもまた意味している。現状では、各個人が情報の信頼性を評価し、取捨選択するしかない。だが、信頼性の評価することは専門家でもない限り容易ではない。
 そこで、環境に関する情報を発信するサイト(ホームページ)の信頼性を認定するシステムをつくることを提言する。例えば、認定機関が環境情報を提供するサイトを審査し、提供する情報が信頼できるものなら認定証を発行し、運営者は認定ロゴをサイト上に表示する。偽造防止のため、ロゴをクリックすると認定機関のサイトにつながり、その認定が本物か確認できようにする。また、認定サイトを定期的に巡回し問題がないかチェックする。そうすることで、見る側は認定を受けたサイトの情報を安心して受け取ることができる。しかし、この方法では認定を受けるサイトが審査・管理費用を負担しなければならないので、個人には負担が大きくなるという問題もある。

3. 情報化と生産・流通・消費

(i). オンラインショッピングの拡大

 わざわざ店舗に行かなくても買物ができる通信販売は以前からあるが、インターネットを利用することでオンラインでの通信販売が可能になった。
 売り手はインターネット上にオンライン店舗(ECサイト)を開設し、そこで商品情報を提供する。ECサイトでは24時間、自動で注文を受け付けることができる。また、一定期間ごとに発行されるカタログや雑誌の広告、チラシ上で商品情報を提供するのとは異なり、商品の種類や在庫、販売価格を即座にサイト上に反映することができる。ECサイトの開設は比較的容易に、かつ低コストでできるようになってきた。そのため、小売店がこれまで店舗でのみ売っていた商品を全国・全世界に販売することや、新規に実際の店舗を持たないオンライン専門ショップを開設すること、生産者が農産物、家電製品、雑貨等を直販することができるようになり、ECサイトは図1のように増え続けている。
 消費者にとってのオンラインショッピングの利点は全国・全世界の商品を24時間いつでも買うことができることである。日頃忙しく、買物に行けない場合や、近くに欲しい商品を扱う店舗がない場合、海外の商品が欲しい場合等に有用である。また、クレジットカードナンバーや個人情報を安全に送信するための暗号化技術や、クレジットカードや代金引換配達とは異なり、現金と同じように匿名性を持ち、かつ即時決済できる電子マネーの普及により、企業―消費者間(B to C)の取引における電子商取引の占める割合(EC化率)はますます大きくなっていくと予想される(図2)。
 オンラインショッピングの拡大は地球環境にどのような影響をもたらすだろうか。
 メリットとしてはオーダーメイド生産や無形商品の消費拡大による廃棄物の減少が考えられる。
オーダーメイド生産というのは消費者の注文に合わせて生産することで、すでにパソコンや時計等が販売されている。消費者はサイト上でデザインや部品等を選択し、自分の好みに合った製品を買うことができる。企業は部品在庫を持つだけでいいので、販売店での売れ残りによる返品や廃棄が回避できる。また、消費者はその製品に対し、より愛着を持つので、そうでない製品に比べ製品寿命が延びると考えられる。
 オンラインショッピングでは、形のある商品だけではなく、形のないものも購入することができる。例えば、パソコン用ソフトウェア、ゲームソフト、音楽、本をデータとしてオンラインで購入し、ダウンロードすることができる。オンラインで購入する場合、CDや紙等の既存の媒体に書き込まれて販売される場合と異なり、配送によるCO2、NOxの排出、記録媒体、包装に由来する廃棄物、返品による無駄がない分、環境負荷が小さい。また、オンラインでのみ提供される占い、オンラインゲーム等のエンターテイメントサービスの消費も増加すると考えられる。現にi-mode等の携帯電話インターネットサービスでは有料のエンターテイメントサービスに人気が集まっている。消費に占めるこうしたサービスの割合が増えれば、有形の商品の占める割合が減り、その分、有形の商品の生産・流通・廃棄における汚染物質や廃棄物の排出量が減少すると考えられる。
一方、デメリットとしては宅配便の配送量の増加が考えられる。
 オンラインショッピングで有形の商品を買うと購入者のもとへ配送されることになる。オンラインショッピングが拡大することで、宅配便の配送量が増加する。しかし、宅配便各社および郵便局は時間帯を指定して配達するサービスを行っているため、各社の車両が1日に何回も巡回し、効率的な配送ができていない。このまま、配送量の増加すると宅配便車両によるCO2、NOxの排出量も同じように増加するだろう。また、梱包材の消費が増え、廃棄物量も増加するだろう。
 このような環境負荷を軽減するために以下のことを提言する。まず、宅配便各社・郵便局で配送センターを共同利用し、配送センターから配達先までの配達は共同で行う。そうすることで時間帯指定配達サービスを行っても、配達車両の積載効率を高められる。
次に、耐久性に優れ、折り畳み等が簡単で再利用可能な規格化された梱包材をつくり、デポジットをかける。これを送付者に対して割安に販売し、受け取り側はそれを送付時に使うか、次に宅配便が来た時に返却してお金に換えることができる。
 また、配送物の受け取り時にコンビニエンスストア(CVS)を利用できるようにする。CVSは宅配便の発送受付サービスを行っているが、受け取りサービスは行われていなかった。しかし、最近になって、セブン‐イレブンがオンラインショッピングサイトを開設し、オンラインで買った商品をセブン‐イレブンの店舗で受け取ることができるようになった。CVSは24時間営業しているため、深夜でも受け取ることができる。また、CVS各社は各店舗への輸送回数を減らすため、複数のメーカーがそれぞれ各店舗に配送するのではなく、共同配送センターに商品を集め、そこから各店舗に配送する共同輸配送システムを採用している。そのシステムを活用すれば、オンラインで買った商品も効率的にCVSの店舗まで配送することができる。
 こうした共同輸配送の取り組みは卸売から一部大型チェーンストア等への配送で行われているが、さらなる拡大が必要である。また、運送会社各社が車両・荷物の情報を共有することにより、長距離トラックの帰り荷を確保し、積載効率を上げることも重要である。

(ii). グリーン購入と生産

 環境問題に対する意識の高まりから、一部の消費者、企業、自治体は環境負荷の小さい商品を購入するグリーン購入を行っている。また、一部の企業は製品の原材料に環境負荷の小さいものを選択するグリーン調達を行っていて、ISO14001認証取得を取引条件としている企業もある。さらに、2000年5月には国等が率先してグリ−ン購入・調達をすることを定めた「グリ−ン購入法」が成立し、環境適応商品に追い風である。
 そのため、企業にとっては環境対応しているかどうかは死活問題になってくる。そうした中で日本国内の地球環境に対する国際規格ISO14001認証の取得件数は年々増加している(2000年6月現在3922件)。ISO14001は環境マネジメントシステムを定めていて、環境方針を定め、環境影響を把握し、目標を立て実行し、定期的に見直すことを要求している。また、環境対策費とその効果を集計する環境会計を導入している企業もある。企業の環境への取り組みをまとめた環境報告書を発行することで情報公開を行う企業も増えている。こうした取り組みは、企業イメージを向上させ市場での競争力を得る効果だけでなく、省エネルギー・廃棄物減少によるコスト削減等の効果もある。
 今後は、製品の一生を通した環境負荷を評価するLCA(Life Cycle Assessment)を用いた各商品についての情報公開も行うべきである。
 消費者がグリーン購入をしようとするとき、どのメーカーのどの製品を買うべきかは客観的な情報がないと決められない。「環境にやさしい」と謳っていても数値的な情報が併記されていないと正確な判断はできない。消費者がグリーン購入をするためには商品の環境負荷に関する情報公開が不可欠である。
 LCAは製品の原料から生産、流通、消費、廃棄までを考慮して環境負荷を調べる手法である。ISO14040、14041に規定されるもので、汚染物質の排出量を調べるイベントリー分析と環境負荷の大きさを調べるインパクト分析がある。ISO14001では詳細なLCAは求めてはいないため、まだ、一部の企業が行っているにすぎない。そうした企業はLCAで得られたデータを製品開発における設計や材料の選択、リサイクル手段の選択に用いている。しかし、消費者がLCAの結果に基づいて商品同士を比較できるような段階にはない。LCAの内、インパクト分析は各環境負荷に対するの重みのつけ方に統一された基準がまだないため、比較に用いるのは難しい。イベントリー分析でも、各企業の用いる基準・条件により結果が異なる。商品選択の判断基準として用いるためには、比較する複数の商品について、同一の基準・条件に基づいた環境負荷の情報を得る必要がある。そのため、業界内で協力し、同種商品には同一の基準・条件を用いるべきである。
 また、イベントリー分析に必要なデータを一つずつ詳細に調べるのには相当な労力を要する。それは、部品や原材料へさかのぼるにつれ、品目数がねずみ算式に増えるからである。LCAの普及にはこうした労力を軽減することは不可欠である。データの再利用性を高めるため、企業内や企業グループ内だけではなく、全世界の企業・機関がデータを公開し、無料で使えるデータベースを構築することが必要である。
 LCAで得られた結果は消費者が比較できるように表示されなければならない。各汚染物質の排出量のデータをそのまま表示する方法と第三者機関がA,B,C,D,E等の評価を与える環境ラベルが考えられる。さらに、製造・廃棄時より使用時での環境負荷が大きい製品等、使用状況・頻度によって環境負荷が大きく異なる場合は複数のモデルケースをつくり、使用頻度別に表示するのが望ましい。

4. 情報化と再資源化

 近年に成立や改正された「容器包装リサイクル法」、「家電リサイクル法」、「グリ−ン購入法」、「建設リサイクル法」、「廃棄物処理法」、「資源有効利用促進法」、「循環型社会形成推進基本法」、「食品リサイクル法」等により、循環型社会の形成へ向けた動きが活発になっている。しかし、輸送だけでもCO2、NOx排出等の環境負荷が生じるため、適切な方法を用いないと、廃棄した場合より環境負荷が大きくなることもありうる。そのため、LCA等によって、リユース、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル等の手段を比較して、最も良い方法を選択するべきである。
 一方で、廃棄物を再資源化しようと思っても、どの企業が再資源化する技術を持っているのか、どこに再資源化原材料・リサイクル商品の需要があるのかという情報が手に入らなければ、再資源化することはできない。再資源化が可能にも関わらず、それを知らずにいることは極めて非効率的である。そこで、全国ひいては海外の再資源化可能な廃棄物の供給元、それを再資源化する技術、再資源化原材料・リサイクル商品に対する需要の情報を集めたデータベースを構築することを提言する。集約された情報があれば、距離やコスト、需要等を比較して最適な再資源化の方法を見出すことができる。また、再資源化ビジネスへの新規参入も促進されるだろう。

5. その他の情報技術の地球環境保護への貢献

 他にも地球環境保護に貢献する情報技術がある。高度道路交通システムによる渋滞の緩和やネットワークを用いた在宅勤務の増加により、交通によるCO2、NOxの排出量が削減できる。また、液晶技術の向上で紙のように軽く柔軟性がある電子ペーパーが登場し、高速無線通信で購入した情報を小型記憶装置に保存し、適宜すばやく情報を書き換えることができるようになるだろう。これが普及すれば紙の消費量を削減できる。
このように、情報技術は使い方次第で環境問題解決に役立つ手段となるのである。図表




引用・参考文献一覧

1. 情報通信ハンドブック2000情報通信総合研究所1999
2. 地球環境ビジネス2000-2001エコビジネスネットワーク編 産学者1999
3. ライフサイクルアセスメント (LCA) の手法と展開 原田 幸明 
http://www.techno-con.co.jp/mailmag/lca.html
4. セブン‐イレブン・ジャパン 環境報告書2000
http://sej.gsc.ne.jp/01/0117_02/0117_02.html
5. ファミリーマート 環境活動報告書 2000
http://www.family.co.jp/inf/iso/iso1.html
6. ローソン2000 環境保全・社会貢献活動への取り組み報告
http://www.lawson.co.jp/kankyo/kan_top.html
7. ampm環境報告書ISO14001認証取得 1999
http://www.ampm.co.jp/
8.NEC環境アニュアルレポート2000
http://www.nec.co.jp/kan/
9. ISO14001審査登録状況
http://www.jsa.or.jp/iso14000/regist.htm

図表





図1、2ともに文献1より引用

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