環境税

 環境問題に関わる規制には直接規制と経済的手段がある。
  1. 直接規制は汚染源を一つ一つ規制する方法である。基準を作ったり、許認可などで法的抑制をする。
    • 利点 即効性がある。
    • 欠点 行政コスト大
  2. 経済的手法には税・課徴金、補助金、排出権取引、デポジット制度がある。
    • 税・課徴金は汚染に対してかけられ汚染者から徴収するものである。
    • 補助金は汚染者に対し、金銭的な援助をし、汚染を防ぐ対策を求めるものである。
    • 排出権取引は汚染物質の総排出量を決め排出権を排出者に割り当て、それを市場で取り引きさせるものである。
    • デポジット制度は飲料容器などに用いられ、一定の金額を上乗せして販売し、容器などの回収時にそれを返還する制度である。

汚染者負担の原則( PPP: polluter-pays principle)とは

 環境汚染に関するコストは市場では取り引きされない外部コスト、つまり社会的コストとして扱われていて、社会の人々の負担となる。そのコストは汚染者自身が負担すべきであるというのが汚染者負担の原則である。

 経済的手段の中で補助金は汚染者に援助をして、汚染者負担の原則を反映していないので好ましくない。赤字財政の中で多額の補助金は出せない。デポジット制度は容器を捨てる汚染に対し汚染者が負担をするのだが、容易に回収のできない二酸化炭素や 窒素酸化物には適用できない。排出権取引は排出権を今までの排出量をもとに割り当てると既得権となり、今まで多く汚染してきた者が得をしてしまう。一人当たりで割り当てると人数の多いところが得をするなど、割り当てが難しい。また、排出権取引市場がうまく成立するかという問題もある。

 税・課徴金は汚染者に汚染によるコストを負担させることで社会的コストを内部化することができる。また、経済的な誘因が働く。汚染物質の排出量に応じて税・課徴金をかける場合、単位当たりの排出量削減にかかる費用は削減が進むほど大きくなるから、汚染者は単位当たりの排出量削減にかかる費用が単位当たりの税・課徴金の金額に等しくなるまで削減をする。なぜなら、単位当たりの排出量削減にかかる費用が単位当たりの税・課徴金の金額より低いうちは削減するほど利益が得られるからだ。また、各汚染者間の削減能力に差がある場合、削減費用の安い汚染者は多くの削減をし、削減費用の高い汚染者は少なくの削減をする。これは一律の基準で削減させるより効率的である。また、税収が手に入るので活用できる。しかし、最適な税率を設定することが難しいとされる。

 このような税・課徴金はすでに海外で実施されている。二酸化炭素排出にかかわる燃料かかる炭素税はスウェーデン、フィンランド、オランダ、ノルウェー、デンマークで、工場からの窒素酸化物にかかるNOx課徴金はスウェーデンで、他にも様々な製品にかかる税・課徴金がある。

 そこで、21世紀には日本でも環境税を導入しよう。

 環境税はまず、炭素税を燃やすと二酸化炭素になる燃料中の炭素の重量に比例して燃料にかける。これによって、石油、ガス、電気の価格が上がる。次に、NOx税・課徴金とDEP税をかける。工場に対しては、その工場のNOx排出量に応じて支払わせ、自動車に関しては、一台一台の測定は難しいので、エンジンを基準にしてその単位当たりの窒素酸化物、ディーゼル微粒子の排出量を測定して、自動車燃料に対してかける。排出量を測定に関しては、実際の走行に近い形での測定が求められる。測定された数値は車体の一部に数値やバーコード, ICチップなどを埋め込んで、それをもとに燃料を販売するガソリンスタンドで徴収すればよいだろう。

 また、自動車重量税は環境に優しい自動車は安く、環境に負担に大きい自動車は高くなるように調整する。

 環境税で税金をとることで経済の成長に悪影響を及ぼすことが懸念されるが、炭素税を導入する各種の経済モデルでは1990年頃から2000年までに1990年レベルで二酸化炭素排出量を安定化するという目標で試算している。炭素税を期間平均で17500〜31500/Ctかけると実質経済成長率が3.5%前後のとき、年間0.01〜0.5ポイント低下するという。エネルギー消費の多い産業は影響を受けるが、税収を再配分することで経済への影響は小さいと予想される。

 また、環境税をかけると国内で生産されたものは輸出すると環境税のかかっていない海外で製造されたものに比べ、割高になって国際競争力が落ちたり、工場が海外に移転したりするという懸念がある。その対策としては輸入品には環境税をかけ、輸出品には環境税を免除または軽減するなどの措置が考えられる。しかし、このような措置をすると輸出部門の排出削減にならないので、最終的には国際的合意の下で世界規模で環境税をかけるのが望ましい。

 また、エネルギー節約と資源保全の観点からリサイクル原料を使わない商品にも税をかけ、リサイクル品をそうでないものより安くなるようにする。例えば、アルミニウムをリサイクルするのに要するエネルギーは、新品のアルミニウムを製造するのに要するエネルギーの1.3%であるし、鉄のリサイクルに要する熱は新しい鉄を製造するのに要する熱の3.7%である。

 税は例えば、再生紙を使っていないパルプ100%のトイレットペーパーにかけたり、飲料容器では缶やPETボトルなどリサイクルが進んでいないものにリサイクル率の低さに比例して税をかける。そうすることによって、リサイクル品の使用が増え、企業もアルミウムやくず鉄の回収をすすめ、リサイクルの努力をするだろう。

 環境税は一定にするのではなく、各年の二酸化炭素の排出量や窒素酸化物・浮遊粒子状物質の濃度やリサイクル率などに応じて、税率を変動させる。これは、そのときに応じた最適なものにするとともに、税率慣れてしまい、排出量が増えることを防ぐためだ。ある地方自治体でごみを有料化したところ、その直後はごみの量が減ったが、次第に増えて、ついには有料か前より多くなったっという例がある。導入後数年は代替手段への移行猶予を与えるため、税率を低く設定して、段階的に引き上げるのがよい。

環境税は逆進性があり、低所得者に高負担となる。しかし、同じく逆進性のある消費税と置き換えれば問題ない。環境税が消費税と異なる点は価格に比例するのではなく、環境負荷に比例してかかる点である。製造時にかかる環境税は価格に転嫁されるが、製造時における環境負荷の小さい商品ほど価格の上昇は小さい。差別的な課税と言える。環境税の税収が消費税分を超える場合、所得税を軽減しても低所得者にとっては利益が薄いので、全国民が関係する年金の財源の一部とする。そうすれば、保険料率を増加の抑制もできる。

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