エコビジネス


環境と経済

 20世紀までの世界では、経済発展を重視し、環境保全をなおざりにしていた。それは、環境汚染を防止するための費用が企業にとってはコストとして認識されていなかったからである。企業の目的は利益を出すことであるので、そのまま捨てれば、ただで、処理すれば金がかかるとすれば、前者を選ぶだろう。
 では、汚染された環境を修復された費用を誰が出すのか?それは、社会である。政府や地方自治体が税金を使って、修復する。修復できない場合は社会の共有資産の損失となる。このように、汚染者が社会に費用を押し付けている状況を外部不経済という。これは、町内会やあるグループで一部の人が権利ばかり行使して、義務を果たさずにいる状況に似ている。前の例で言えば、真面目に環境のことを考えて、適切に処理をしている企業は設備投資や運営費がかさみ、市場競争力が汚染企業に比べて小さくなってしまい、汚染すればする程もうかるという事態になる。だからと言って、皆が汚染しつづけると、自然の回復力をはるかに超え、健康被害や生態系への被害等が起こり、社会的損失は莫大になる。有名な水俣病も防止するための費用は些細なものだったのに、被害は莫大になった。社会は莫大な被害を受けても、企業が負担するわけではないから、企業は汚染を止めないかもしれない。
 では、どうしたらいいか。方法には3つある。

政府による規制

 一つ目は直接規制である。法律を作り、環境汚染物質の排出基準を定め、違反したら罰金を課したり、排出を停止させたりする。例えば、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等である。また、健康被害の損害賠償の義務を負わせることもできる。こうした法律で縛られると、企業は環境を汚染したことで払わなければいけない罰金や損害賠償の費用と汚染防止にかかる費用を比べるだろう。もし、防止費用の方が安ければ防止をする。

環境税

 二つ目は汚染物質の排出に対して税金(環境税)をかける間接的な方法である。例えば、地球温暖化防止のために二酸化炭素1トン排出するに当たって、10,000円税金をかけるとする。企業は省エネのために投資をして二酸化炭素1トン削減するコストが10,000円より安ければ、省エネを実行した方が得になる。しかし、無駄が多いとき無駄を減らすのは簡単で二酸化炭素1トン当たりの削減コストは安いが、だんだん無駄がなくなってくると減らすのが難しくなり、二酸化炭素1トン当たりの削減コストは高くなってくる。それが10,000円を超えると、例えば20,000円になると二酸化炭素1トン削減すると10,000円の赤字になる。だから、削減コストが10,000円のところで止める。
 環境税のいいところは外部不経済となっていた環境汚染の費用を企業が負担することによって、それが市場に適切に反映されるところである。また、税金なので、税収が増え、それが社会に還元される。

排出権取引

 三つ目は排出権取引である。まず、各企業に排出権を割り当てる。例えば、A社、B社はそれぞれ1年間に100トンずつ二酸化炭素を排出してよいとして、それをオーバーしたら多額の罰金を課す。A社、B社はこれまでそれぞれ1年間に110トンずつの二酸化炭素を排出している。各社とも多額の罰金を払うことはできないので、何とか10トンを削減しなくてはならない。A社の二酸化炭素1トン当たりの削減コストは5,000円、B社は2,000円であるなら、二酸化炭素10トンの削減コストはA社で50,000円、B社では20,000円、合計では70,000円となる。しかし、B社はさらに10トンを20,000円で削減できる。そこで、B社は排出権10トン分をA社に1トン当たり30,000円で売ることにした。その場合A社は110トン排出して30,000円、B社90トン排出して10,000円、合計40,000円の費用がかかり、別々に削減した場合より、A社は20,000円得、B社は10,000円得することになる。このように排出権取引には同じ削減量を低コストで達成できるという利点がある。
 しかし、こうした規制や税金を課して企業に経済的負担をかけると景気を悪くすると言う意見もある。

エコビジネスの発展

エコビジネスとは?

 エコビジネスは環境関連のビジネスで多岐にわたる。環境浄化業やリサイクル業、省エネ製品の製造・販売、環境調査、環境監査、エコファンド等である。
 これまでの製造業やサービス業等は産業の発展が汚染の拡大やエネルギーの消費等の環境負荷につながるものであった。しかし、エコビジネスは環境負荷の削減自体をビジネスにしているので、経済活動をすればする程、環境負荷が減少する可能性がある。

ビジネスチャンス

 しかも、エコビジネスをするチャンスは既存の多くの企業にある。例えば、あるビールメーカーでは、今まで、捨てて廃棄物になっていたビールかすを飼料等に余剰酵母を健康食品などに利用することで、これまでかかっていた費用を無くし、さらに利益に結び付けている。工業団地でも工場などで生じる副産物を別の企業の工場で原料として販売する等の取り組みが行われている。
 環境負荷の削減が廃棄物処理量や電力消費量等のコストを削減につながれば、利益になるが、環境負荷の小さな商品を開発することによっても、環境負荷の削減と利益につながる。消費者の環境保全意識の高まりを背景に、環境保全型の商品の市場競争力は高まるだろう。また、世論の環境保全への要望が高まれば、規制も厳しくなる。そして、規制をクリアしていない商品は市場から脱落する。直接消費者に商品を販売していない下請け企業も例外ではない。例えば、大手メーカーのS社はヨーロッパでの規制をクリアするために下請け業者に納入する部品に含まれる有害成分の量について独自に規制をかけている。結果として、環境先進企業が生き残り、発展することになる。

環境保全型企業はどれ?

 では、環境保全型企業をどう見分けるか。環境保全型企業であることを証明するものの一つにISO14001認証がある。ISO14001は環境マネジメントに関する国際規格で、企業活動、製品及びサービスの環境負荷の低減など継続的な改善を図る仕組みを構築するための要求事項を規定している。PDCAサイクル(Plan(計画)→Do(実施)→Check(点検)→Act(見直し))を継続的に実施することで環境経営を進めるというものである。環境先進企業では、ISO14001認証取得を取引の条件としているところもある。そのため、日本ではISO14001認証の取得件数が年々増加している。ISO14001認証の有無だけでは規格を満足しているかどうかしかわからない。そこで、各企業では環境への取り組みや方針等をまとめた環境報告書を公開している。また、環境負荷削減への投資とその効果を見積もった環境会計を行っている企業もある。各企業のホームページではpdf形式で環境報告書を公開している。かなりの枚数があるので、紙を無駄にしたくないなら印刷しない方が良い。
 こうした取り組みは現在は大企業が中心だが、今後は中小企業も行っていくと考えられる。その後、環境負荷削減技術を世界に輸出することで世界全体の環境負荷削減と日本の経済発展に貢献すると考えられる。

これまでのまとめ-提言-

何をすべきか

政府

 消費税の一部を環境税に置き換える。そうすると、環境負荷の高い商品は高く、環境負荷の低い商品は安くなり、消費者は安い商品を買えばよくなる。

企業

 環境経営をする。環境負荷の小さな企業活動をすることが市場での高い競争力をもたらすということを認識して、環境マネジメントシステムを運営する。環境報告書や環境会計により、株主や消費者、社員、地域社会等への説明責任を果たし、イメージアップを図る。

市民

 かけがえのない地球を守るために、日常生活で環境負荷を意識する。エネルギー消費の無駄を無くす。より、環境負荷の少ない手段を選ぶ(例えば、交通手段は車より電車)。環境経営をしている企業に投資する。環境負荷をかけない形の豊かさを見つける。

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