大切な一言


 大切なことを伝えるためにはそれなりの状況が必要です。伝える相手がいなければ始まらないし、他の人に聞かれたくないとか。昼間ではだめだとか。そんな状況がしょっちゅう来るなら、いいのですが、滅多に来なかったり、一度しか訪れなかったり、また、待っているだけでは決して来ない場合もあります。
 そうして状況が訪れても、きっかけを見いだすことは容易ではないでしょう。そのことについて意見を求められれば、必然的に言うことができますが、そんな都合のいい具合にはなかなかいかないもの。ただ待っていては、時は無情に流れてその機会を奪ってしまいます。
 でも、大切な一言はなかなか言えないもの。重大な内容である程、その言葉に想いが詰まっている程。なぜなら、良きにしろ、悪きにしろ、言った後に大きな変化がもたらされるから。どんな台詞だとしても、そこに重い意味が込められていたら、容易には言えません。そういった言葉は意外と冗談めいては言えるのですが、本当に冗談だと取られかねません。ですが、真剣に、真面目くさってはなかなか言えないものです。自分で目の前に壁をつくってしまうのです。しかも、言おう言おうと気負うと緊張して余計言いづらくなったしまったり。
 でも、ためらうごとに目の前に立ちはだかる壁は高くなっていきます。そんな壁が積み上がっていくのをただ呆然と見上げていると、その壁は天まで届いてしまいます。たった一歩だけ向こう側に行ければいいのに、越えられる内に越えておかないと、もう越えることはできなくなってしまいます。できるだけ、壁が低い内に一歩を踏み出したいものです。しかし、もう壁を越えることができなくなったと思っても、諦めてはいけません。壁を突き破ればいいのですから。
 その時間は無限ではありません。時の流れはやがて、焦りや緊迫感と静寂をもたらし、身動きを取れなくします。目の前を通り過ぎるものをただ見送ることは楽な選択かもしれませんが、後悔は後から襲ってくるもの。遮らないと止めることはできません。
 たった一瞬、たった一歩の勇気があればできるはず。
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