音のない世界

前まで聞こえてたものが音を発さなくなった
あんなに大好きだったTVさえ見なくなった
うるさかったはずの友達の笑い声が聞こえなかった

大好きな人の声はどんなだったかな?
あなたの笑った顔を見ると、笑い声が一緒に聞こえたよ
こんな声だったっけ?
違う、きっともっと高かった
思い出そうとする度、記憶が希薄になってゆくのが分かった
忘れたくないよ
ねぇ、どうして声を出さないの?
声、どこに忘れてきたの?
それとも声を置いてきたのは私の方なの?
私、今どんな声で泣いてる?
あなたともう会話する事さえ許されないなんて
私とはもう話してくれない癖に、あの子と話したりなんかしないでよ
私はもう、これから出会う人の声を一度だって聞く事を許されない

神様──
どうして私だったの?


フィガロ
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