ビギナー
息が詰まりそうだった。あなたに察されるんじゃないかって恥ずかしかった。あなたの顔が近付く度、「メイク落ちてないかな?」「あなたの目に映る私は少しでも可愛く映ってるかな?」なんて気が気じゃなかった。私が伏し目気味な時、あなたの体が近付いた、顔が近付いた、キスされるんじゃないかって思った。心臓の鼓動がピークに達した時、私は意味もなくあなたに無性に話し掛けて空気を塗り変えた。あなたとは別れたとはいえ、キスなんて何十回もした仲なのに。つい3ヶ月前にもしたばかりなのに。こんな時、私はいつも「あなた」のビギナー。
フィガロ
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